あの世界中で記録的大ヒットを飛ばした「アナと雪の女王」に本格的なパクリ疑惑が浮上しているのをご存知だろうか。この件でディズニーは実際に訴えられており、現在裁判が進行中。その結果によっては多額の損害賠償を支払わなければならない可能性もある。
アナと雪の女王の予告動画はパクリ?
そもそも訴訟国家アメリカでは特に大企業はなにかに付けて訴訟のターゲットにされてしまうのは今更説明するまでもないだろう。
中には大企業を狙って、お金をむしり取るために、まるで非現実的な著作権問題で訴える人も後を絶たない。例えばニュージーランドの女性作家Isabella Tanikumi(イザベラ・タニクミ)が「アナと雪の女王」は自分の人生を描いたものだなどと主張してインターネットでちょっとした騒ぎになった。
イザベラ・タニクミの場合、自分の著書「Yearnings of the Heart」と「Living My Truth」が映画の内容と極似していると主張。しかし実際にこれらを読んだ人たちからは「こっちはペルーのアンデス山脈の話で全くアナと雪の女王とは無関係」などといったレビューがアマゾンドットコムに掲載されるなど失笑を買っている。そのせいで「アナと雪の女王」に便乗して自分の本を宣伝しているのではないかといった批判まで上がってしまった始末だ。
こうした疑わしい訴えがある一方で、ある予告動画を巡ってディズニーは今頭を大いに悩ませている。それが前述した本格的なパクリ疑惑とも言える訴訟だ。
色々と説明する前に二つの動画を見てもらったほうが分かりやすいだろう。一つ目の動画は2013年1月10日にユーチューブで公開された、アニメーターのKelly Wilson(ケリー・ウィンソン)とNeil Wrischnik(ネイル・ウィスクニック)が共作した 「The Snowman (雪だるま)」。そしてもう一つがディズニーが2013年6月18日に公開した「アナと雪の女王」の予告動画だ。
「アナと雪の女王」の予告動画
これらの動画を見てあなたはどのように思っただろうか。似ていると思う人もいるだろうし、大して似ていないと思う人もいるかもしれない。
いずれにしろ「The Snowman」の作者ケリー・ウィルソンは2014年3月、ディズニーを相手に著作権侵害の訴訟を起こした。ディズニーはこの訴えを不当なものだとして退けるように要求したが、カリフォルニア州連邦判事はディズニーの主張を認めなかった。
さらにディズニーはユーチューブの閲覧記録を調べ、「The Snowman」がどこの地域の視聴者に視聴されたのかをデータにまとめた上で、「アナと雪の女王」の予告動画クリエイターたちはこの動画を見ていないと主張し、クリエイターたちも「動画を見ていない」と証言した。しかし裁判所はこの主張も退けた。
というのも実は「The Snowman」は2011年に開かれたサンフランシスコ国際映画祭で公開されており、そこに「アナと雪の女王」の予告動画クリエイターたちも出席していたのだ。なぜなら同映画祭では「The Snowman」のほかにディズニーピクサーのクリエイターが制作した短編映画「Play by Play」も上映されていたからだ。
さらに衝撃なのは、「The Snowman」のケリー・ウィルソンと共作者がディズニーとピクサーの両企業に何度も自分の履歴書を送っていたことが判明している。
もちろんその履歴書には自分の作品の「The Snowman」のことも書かれていたのは言うまでもない。果たしてこのまま公判に突入するのか。あるいは示談になるのか。それとも予想もつかない結末が訪れるのか。暫定的だが公判は今年10月に予定されている。
誤解のないように、またディズニーの名誉のために言っておくが、あくまでも同件は予告動画を巡る著作権侵害訴訟であり、本編に関してのものではない。裁判の判決がどちらに向かおうと、この一件で本編の価値や評価が下がるとは考え難いと思うがどうだろうか。